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タントラへの道 グル3

ミラレパの場合には、趣を異にして状況が展開する。

農民であったミラレパは、マルパがナロパに出会ったときに比べれば、教育もほとんどなく洗練されてもいなかった。
殺人を含む多くの犯罪さえ犯していたのだ。

彼は惨めさうちひしがれ、必死の覚悟で悟りを求め、そのためには師マルパが要求するどんな代償も払うつもりだった。

そのミラレパにマルパは文字どおり肉体をうちくだく支払いを求めた。
彼はミラレパに次から次へと家を建てることを命じ、ひとつが完成するやいなやすぐにそれを取り壊させるのだった。

しかも風景を損なわないためという理由で、ひとつひとつの石をもとどおりの場所に返すことを要求した。家の取り壊しを命じるたびに、マルパは、これを建てよと言ったとき、自分は酔っていたのだとか、こんな家を建てよと言った覚えはないなどとまったく理屈に合わない言い訳を使った。


 しかし、マルパから教えをうけることに心も焦がれんばかりのミラレパは、命じられるままに建て終えた家を壊しては新しい家の建設にとりかかるのだった。


 最後にマルパは九階建ての塔を設計した。
まさに骨身をけずる重労働に耐え、石を運び上げて塔を完成したミラレパは、マルパの前に出て今度こそはと教えを乞うた。

ところがマルパの返事は、「それぐらいのこと―――たった九階建ての塔をわしのために建てたぐらいで、わしから教えを授かりたいのだと? もっともっと入門料として献上品をもってこなければだめだろうよ。」
 と言うのだ。


 ミラレパはまったくの無一物だった。あらゆる時間と労力を塔の建設につぎこんでいたのだ。
そのときマルパの妻のダメマがミラレパの苦境を見かねてこう言った。

 「深い献身と信仰がなかったらどうしてあのような塔を建てることができたでしょう? 入門料にする大麦と反物は私からあげたとしても、主人に何も言える理由はないはずです。」


 そこでミラレパはダメマから大麦と反物を受けると、それをほかの弟子たちが献上品とともに入門料としてマルパの前に差し出した。
しかしマルパは即座にその献上品に気づき、すさまじい形相でミラレパに向かってどなりちらした。

 「これはもともとわたしのものではないか。大うそつきめ! おまえはわしを騙そうというのか!」そして文字どおりミラレパを足蹴にして、弟子たちの車座から放り出してしまった。


 このときになってミラレパは、マルパがいつかは教えを授けてくれるだろうという望みを完全に捨てざるを得なかった。
絶望のあまり自殺を思いたった。
ミラレパが、いまにも命を絶とうとしたそのときにマルパがやって来て、「お前には教えを受け入れる準備がやっとできた」と告げたのだ。

教えを受ける過程は、弟子がその代償として何かを与えることを抜きにしてはありえない。
精神的な放棄ともいうべき帰依という献上品が必要だ。

師と弟子の関係を検討する前に、帰依すなわちゆだねること、開くこと、期待を捨てることについて話さなければならない理由はそこにある。
師の前で優れた弟子らしくふるまうことよりも、ゆだねること、自己を開くこと、そしてあるがままの自分を差し出すことが欠くことのできない条件だ。

教伝料をいくら払う意志があるか。
師にたいしてどのような態度をとるか、また賢明な応答ができるかどうかなどということは問題ではない。
就職や、新しい車を買うための面接ではないのだ。就職ならば履歴書の内容や服装、靴の光り具合、応答の態度や話し方によって決まるだろう。車を買うときにはいくら預金があるか、信用はどうかが問題だ。  


 しかし精神性となるとそんなことではすまされない。
それは就職願いを出したり身なりを整えて雇用主の印象をよくしようとすることとはわけが違う。

そのようなごまかしは、すべてを見とおすグルとの面接では通用しない。
グルとの面接のために特別の服装をしたらグルは大笑いをするだろう。
彼の気に入られようとする態度もこの際通用しない。

実に無意味なことだ。師に向かって自分を開くという本当の誓いと、自分のもっているあらゆる偏見を捨てる意志をこそ私たちはもたなければならないのだ。

ミラレパは、マルパが偉い学者であり、聖者らしくヨーギの身なりをして数珠を持ちマントラを唱えたり、瞑想している姿だけを予想していた。
しかし実際に会ってみると、マルパは小作人たちに指示を与えながら畠を作り土地を耕しているのだ。


 私は、西洋で、(グル)という言葉が乱用されていると思う。
〈精神の友〉と言った方がよいだろう。教えとは二つの精神(こころ)の相互の出会いを強調するものだからだ。

それは高度に進化した存在と惨めで混乱した人間との主従官益ではなく、むしろ相互のコミュニケーションの問題なのだ。

主従関係であるならば、混乱した人間にとって高度に進化した存在は、そこに坐ったりしてないで空中に浮かび上がり、高みから自分を見おろしているように思われるだろう。
その声は響き渡り、空間を満たす。彼の言葉や咳ばらいや動作のすべてが、彼の智慧の深さを表しているかのように思われる。

しかしそれは夢物語だ。

グルとは、私たちとコミュニケートし、その個性を私たちに露にして見せる〈精神の友〉であるはずだ。
ミラレパに対するマルパ、マルパに対するナロパのように―――。

マルパは農民ヨギとしての性質をさらけ出した。
妻と七人の子どもがいた彼は、土地を耕し畠を作って自分と家族の生活を支えていた。

しかしこれは、彼の生活の日常的な側面にすぎない。
彼は農作物の収穫や、家族のことを思いやると同じように弟子たちのことを思いやった。
すべてに徹底し、生活のあらゆる細部に注意を払ったからこそ、すぐれた父であり、農民でありながら同時に有能な師でもありえたのだ。

マルパの生活態度には、唯物主義や精神の物質主義のひとかけらも見られない。
精神性を重要視して家族や大地と自分との肉体的なつながりを無視するようなことはなかった。
物質と精神の両面において物質主義にとらわれることさえなければ、その一方を極端に重要視することはないはずだ。


 グルを選ぶのに、その名声の高さ、著書の数、あるいは帰依させた信者の数によって選ぶのは無益なことだ。
それよりもあなたが個人対個人として、直接的に徹底的に彼とコミュニケーションできるかどうかが目安になるべきだ。

どれほど根強くあなたは自己欺瞞にとらわれていることだろう。
〈精神の友〉に向かって本当に自己を開いたら、あなたは彼とともに道を歩むことを余儀なくされる。
あなたは彼にすべてを正確に話すことができるだろうか? 

彼はあなたのことを、何か知っているのだろうか?

ということは、彼自身のことを知っているのだろうか?
彼はあなたの仮面を見すかし、正確に直接あなたとコミュニケートすることができるだろうか?

 師を求めるときには、その名声や智慧の偉大さよりもこうしたことが考慮されなければならない。


 面白い話がある。 
あるグループの人々がチベット人のある偉大な師のもとで修行することになった。
そのグループの全員がそれまでにもさまざまな師について学んできたのだが、今度はそのチベット人の師のもとで、集中的に修行をする決意をしたのだ。
彼らはみなその師の弟子になることを切望し、師との出会いを求めた。
ところがこの偉大なる師は、彼らの誰ひとりをも弟子として受け入れようとしないのだ。

 「おまえたちを弟子にするには、ただひとつだけ条件がある。」
と彼は言った。

 「それはこれまでの師たちとすっかり縁を切ることだ。」


 みんなは騒然として懇願した。彼に対する献身の気持ちには一片の曇りもないこと、彼の名声の高さをよく知っていること、そして彼のもとで修行することを切望していること―――。

しかし偉大なる師は、彼らを受け入れる条件を変えようとはしなかった。とうとうひとりだけを除くグループの全員が、測り知れない教えを与えてくれた過去の師たちを断念する決心した。

グルはそれを聞くと満足そうに、翌日また戻ってくるようにと言い渡した。
しかし、翌日みんなが戻ってくると、グルはこう言ったのだ。


 「わしにはおまえたちの嘘がよくわかった。次に他の師のところに行ったら、おまえたちはいまと同じようにわしを捨てるだろう。さあ出て行け。」


 そして過去の師たちから授けられた教えを重んじたひとりだけを残して、全員を追い払ってしまった。
彼が弟子として受け入れたそのひとりは欺瞞のゲームを演じつづけることを拒み、グルを満足させるためにあるがままの自分を偽ることを拒んだのだ。

精神的な師と友だちになろうとするなら、あっさりとオープンに友だちになるべきだ。

グルを自分の味方に引き入れようと試みる努力ではなく、対等な存在としてのコミュニケーションがそのとき起こるだろう。
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唯我独存

Author:唯我独存
ヨーガ・瞑想暦20年ほど。レイキマスター。日々この瞬間を大切にすることをモットーとする。気付き、寛ぎ、ハートの三つから、今ここにあることを体得し、それを伝えていこうとしている。

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